桃色カタオモイ 公園にあるテニスコート。 ここは、主に若者が集まるストリートテニスコートとして在った。 「ふんふんふんふ〜ん・・・」 鼻歌を歌いながら自転車をこいでいるのは桃城武。 テニスの名門・青学の2年レギュラーで、部活を終えてもなお、テニスをするためテニスコートへ向かっている。 テニスコートへ続く階段のそばに自転車を止めると、階段を駆け上がった。 「おっ、やってるやってる。」 パコン、パコン とボールを打つ音が響く。 しばらく周りを見渡していると、片目が前髪で隠れた同い年くらいの少年と目があった。 「桃城!」 「おっ、リズム!」 「リズム言うな!」 そう。この少年は「リズムにのるぜ♪」が口癖な不動峰中2年、神尾アキラ。 彼はよくこのテニスコートにやってくる。 「・・・桃城は・・・ひとりで来たのか?」 「んぁ?そうだけど。お前は?」 「俺は・・・」 「あら、桃城くんじゃない。」 「! 橘妹!」 そういってタオルで汗を拭きながらやってきたのは橘杏。 アキラと同じく不動峰中2年である。 「橘妹はやめてって言ってるじゃない!」 「杏ちゃん、声おっきいよー!」 すると、ふてくされる杏の後ろから缶ジュースを4本持った色白の少女がやってきた。 桃城は、ドキッとする。 ・・・今にも折れちまいそうだ・・・ 「あ、。どこ行ってたの?」 「んとね、飲み物買いにちょっとそこまで。」 「なによ、もう少し待っててくれたら一緒に行ったのに・・・」 「試合の後すぐあると嬉しいでしょ?」 「・・・まぁ。そうね。」 そしては何か言いたげにしている桃城を見て、言った。 「桃城くん?」 「へ?」 そのセリフに杏、神尾、そして桃城が、驚いた。 「え、ちゃん、桃城のこと知ってたの?」 「だって、学校一緒だもん。」 「あっ!そう言われれば、青学だったわね!」 「マジ!?何年?」 「2年1組、です。」 「あたしの従妹よ。ね。」 「ねー。」 桃城は急に嬉しくなった。 が、同じ学校だった事。 同じ学年だった事。 そして 自分を知っていてくれた こと。 「っしたぁ!」 ハードな青学テニス部の今日の部活が終わった。 みなくたくたな中で、ひとり、ピンピンしているのは、桃城。 「じゃあ、お先!」 そう一言言うと、カバンを勢いよく持ち上げ、部室を後にした。 「・・・なんか桃先輩、最近テンション高くないッスか?」 「? いつも高いにゃ?」 「・・・いや、でも最近はいつも以上に高いな・・・ たぶんデータを取っている中で最高だろう・・・」 「でも何が桃のテンションを上げているんだろうね」 「・・・・・・・・フシュ〜〜・・・」 そんな会話を仲間達がしているとはつゆ知らず、 今日も桃城はテニスコートにやってきていた。 「あっ!桃城くん!」 「よ、」 「今ね、神尾くんと杏ちゃんがやってるよ。 杏ちゃんけっこう強いんだよー!女の子だけど、男子に負けてない!」 「へー。」 嬉しそうに言うを見て、桃城も嬉しくなる。 が、次のの一言で桃城は崖から突き落とされる思いをする事になった。 「・・・杏ちゃん、神尾くんが好きなのかな・・・」 ふぅ・・・と対戦している二人を見て、がぼそっと言った。 ・・・もしかして、は神尾のコトが好きなんじゃ・・・!? 桃城は不安に駆られる。 「・・・私もテニス・・・やりたいなぁ・・・」 意味深な言葉。 これは、つまり、さっきのセリフからして 神尾と対戦してみたい。 桃城はそう受け取るしかできなかった。 どうしようもない気持ちから抜け出したくて、に話題を振る。 「そ、そーいえばさ。なんではいつもココに来ててテニスやんねーの?」 ・・・失敗した。 の顔が曇る。 それは寂しそうで。 それは少しでも触れたらこなごなに砕けそうだった。 「・・・・・・・・・・・・・」 「あ、悪・・・・・・」 「私ね、ぜんそくもってるの。」 「・・・ぜんそく?」 「そう。呼吸器官の病気で、小さい頃からずっと患ってるんだけどね。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「私の場合、特にひどくて、運動は一切禁止なんだ。 自転車乗るのもあんまりいい顔されないの。」 「・・・・・・・・」 「だからテニスなんてとんでもなく出来ない。 でもいいの。こうやって、テニスを間近で見られるだけで幸せだから!」 笑顔。 一生懸命作っていた。 本当はテニスがしたくてしたくてたまらない。 そんなを見て、自分はなんて酷い事を言ってしまったんだろう・・・と思った。 「・・・ごめん・・・」 「え?」 「、めちゃめちゃ辛いのに、俺酷い事言っちまった・・・」 「そんなことないよ!大丈夫! なんでいつも体育休みなのって聞かれるのと同じだし!」 「・・・・・・ごめん・・・」 同じ・・・じゃない。 体育 と テニス じゃ全く違う。 の中では。 「なぁ、。今日帰り俺の自転車乗ってかねぇ?」 「えっ!いいよ!!桃城くん大変だし・・・!」 「あら。いいじゃない。、自転車乗りたがってたわよね。」 「へー。なに桃城、ちゃんに気があんの?」 神尾がからかう。 すると桃城は赤くなる。 「ばっ・・・何言ってんだよ!」 「そうだよ!そんなわけないじゃん!!」 ショック。 ショック。 いくら神尾が好きだとわかっていても こうはっきり否定されると さすがの桃ちゃんもショックだ・・・ 「でも、チャンスよ?私自転車折り畳みだし、神尾くんは電車だし・・・」 「・・・う・・・」 「の、乗りてーんだろ?遠慮すんなって!」 「・・・・・・・じゃあ、お言葉に甘えて・・・」 さすがの桃ちゃん ショックは受けるけど、立ち直りは早い。 音速だ。 二台の自転車が、坂を下っている。 「うわー!気持ちいいーー!!」 「手ぇ離すなよー!」 「桃城くん、を落とさないでよ!」 自転車の後ろに座り、桃城の腹に腕を回してしっかり掴まっている。 セリフはいつもの通りだが、心臓は、今にも破裂しそうだ。 やべぇ・・・! 心臓の音が聞こえていたらどうしよう、と不安だった。 早くの家に着かないか・・・ いや、でも、着いて欲しくない・・・ そんな気持ちと戦っていた。 「あ、私の家、そこ!」 「お、おうっ」 そう言われると、至って普通の、一戸建ての家で停まった。 はゆっくりと降りる。 「ありがとう。すごい楽しかったよ!」 「いや、礼を言われるよーなコトはしてねーよ。」 「、よかったわね。」 「うん!」 初めて自転車に乗って興奮したのか、の白い頬はほんのり赤かった。 そしていつもの、明るい笑顔だ。 「じゃあ、また明日ね。」 「おー、またな!」 「ゆっくり休むのよ。」 「うん、わかってる!どうもありがとうね!おやすみ!」 そういうとは門を開け、家に入っていった。 「ね、神尾くん神尾くん!」 次の日から、何故かは神尾にべったりだった。 複雑な心境の桃城。 「「・・・好きなのかな・・・」」 ハモった。 誰だ?と声のした方を向くと、杏もまた、こちらを見ていた。 「何よ。」 「・・・なんだよ。橘妹、神尾が好きなのか?」 「んなっ!ち、違うわよ! 桃城くんこそ、が好きなんでしょ?」 「そ、そんなことねーよ!」 「・・・・・・・・・ふぅん・・・」 疑わしい目で桃城を見た後、杏はまたと神尾の方に視線をやる。 桃城も、同じ行動を取る。 やっぱり いつも笑顔の君の、特別な笑顔は こっちに向いてくれないのだろうか 「あら?神尾くんは?」 「んー?なんか飲み物買ってくるとか言ってどっか行っちゃったよ?」 「・・・じゃあ、桃城くんはまだ来てない?」 「うん。」 「ふーん・・・」 の横に座る。 は気がついてないようだったが、自分から見ると・・・なんとなく、気まずい。 従妹の好きな人を知ったから? それとも自分の・・・ 「ねぇ杏ちゃん。」 びくっと肩が揺れた。 今自分の心の中で思っていた事を読みとられたかと思ったから。 「な、なに?」 声が上擦る。 声が震える。 「杏ちゃん、神尾くんのこと好き?」 困った。 ずっと仲良くて、何でも話せた。 でも今は違う。 の好きな人を知ってしまったら、自分の好きな人なんて言えるわけがない。 と同じ人なんだから・・・ 「・・・特に何とも思わないわ。」 「それは、神尾くんを恋愛対象として見てないってコト?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・そうよ。」 冗談でも言いたくなかった。 「嘘でしょ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘じゃない。」 「嘘だよ。」 「嘘じゃない。」 「じゃあどうして杏ちゃん泣いてるの?」 え? 泣いてる?? 手で目を拭った。 ・・・水滴が、ついた。 「杏ちゃん、ホントの事言ってよ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 「杏ちゃん。」 「・・・言えない。」 「どうして?」 「・・・だって・・・昔から発作や治療でずっと苦しんできたが やっと幸せになれるかもしれないのよ? そんなの幸せを奪うなんてできない・・・! どうしてあたしに譲ろうとするの!?だって、神尾くんが・・・」 「え?」 「・・・神尾くんが好きなんでしょ?」 「・・・・・・・・・私が、神尾くんのこと好き?」 「・・・・・・そう・・・でしょ?」 「・・・そんな風に見えた?」 ・・・こくん、と頷く杏。 するとは申し訳なさそうな顔をして、杏を抱きしめた。 「ごめんね、ごめんね・・・!杏ちゃんがそんな風に見てたなんてわかんなかったよ・・・!! 私バカだね。杏ちゃんのためって思ってたのにかえって杏ちゃん苦しめちゃってた・・・んだ・・・!」 杏の肩に冷たさが伝わる。 そこに顔を埋めているが、泣いている。 「・・・、違うの?は、神尾くんのこと・・・」 「好きだけど・・・恋愛感情じゃな・・・よ・・・」 「・・・そうだったの・・・!?」 ひたすら泣く。 杏のシャツの肩の部分はの瞳から溢れるモノで濡れそぼっていた。 杏は、を抱きしめ返す。 「・・・・・・あたし、神尾くんが、好き。」 「・・・・ほんとに?」 「・・・嘘言ってどうするのよ。」 するとの表情が急に明るくなった。 「やったね神尾くん!」 「え!?」 すると神尾が階段を上ってきた。 その顔は、真っ赤である。 「か、神尾くん・・・!」 「杏ちゃん・・・お、俺・・・!」 ふたりの邪魔をしては悪いな、と思い、今神尾が上ってきた階段をそっと下りる。 一段、二段、と下りていくとコートに向かおうと階段の真ん中あたりを上っている桃城が目に入った。 「あれ?桃城くんだ。」 さっき杏の為に泣いた瞳はまだ潤んでいて、とっさに目を擦る。 「! それ・・・誰に泣かされたんだよ・・・!?」 「え?」 「神尾か・・・!?」 「えっ!?」 「あのやろ・・・!」 勘違い王・桃城武、14歳。 階段を駆け上がろうとする。 今、良いムードの杏達の邪魔をするわけにはいかない。 とっさに桃城の学ランの裾を掴む。 「ちがうの!関係ないからほっといて!!」 「好きな子が、泣かされたんだ!ほっとけねーよ!!」 「えっ?」 「あっ!」 階段のど真ん中で固まる二人。 徐々に徐々に、お互いの顔が赤くなるのが見えた。 「・・・・・・・・・も、もも・・・ひゃっ」 桃城は、自分の一段下にいたを抱き寄せた。 は目を見開いて、驚きを隠せない。 「・・・もう言っちまったけど、俺、が好きだ。 たとえが神尾を好きでも、それでもいい。」 「! も・・・」 「俺は、が好きだ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 いま、自分の顔はどうなっているだろう。 ・・・・真っ赤に決まってる。 何も喋らないを、桃城は解放しようとした。 しかし、は桃城の背中に腕を回して離れようとしなかった。 「やっぱり私、誤解招いてたんだね。」 「?」 「ごめんね。・・・・・・・・・・・・・・私もね・・・・・・・桃城くんが、好きなの。」 「!? 神尾は・・・!?」 「・・・神尾くんは、ともだち。」 「・・・・・・・・・・・マジかよ・・・?」 「マジマジ。」 ふふっと頬を赤く染めて笑った。 その仕草が可愛くて、桃城は放そうとした腕をまた、絡ませた。 「・・・・・やべー・・・すっげぇ可愛い・・・さらいてェ・・・」 「どこに?」 「二人だけの世界。」 「・・・やらしー。」 「っ!そういうこと想像するこそ!」 「う・そ!冗談だよ。私も同じこと思ったもん」 「・・・杏ちゃん、俺らどうすればいいわけ?」 階段の一番上から見下ろす人が、二人。 もちろん、桃城とは気付いていない。 「・・・ラブラブ過ぎて出て行けないわ・・・ もうちょっとしたら出ていきましょ。」 はぁ、とため息をついて二人を見つめる。 「・・・桃城くん、私、ぜんそく治す。」 「え?」 「・・・それで、桃城くんと、テニスやりたい。」 「・・・・・・無理すんじゃねーぞ?」 「うん。・・・治ったら、テニス、教えてくれる?」 ・・・・・・・そんな上目遣いで言われたら、 断れねーなぁ・・・ 断れねぇよ・・・ 「もちろん。スパルタ桃ちゃんだから覚悟しとけよ!」 「・・・はぁい。」 fine. -------------------------------------------------- ごめんなさい。(土下座 なんだろう・・・コレ・・・ 無駄に長い上・・・ 桃ちゃんと神尾と杏ちゃんなのに、はずなのに・・・!! やばい・・・座布団飛んできますね・・・! ほんと、ごめんなさい・・・。 タイトルは某松浦さんから。 話の最後とタイトルが噛み合ってませんが; いいんです。私のタイトルはいつもこういうもんなんです。 それでは、ここまで読んで下さってありがとうございました。 次回はもっとちゃんとしたモノを書けるよう精進します・・・! 020906 * このままウィンドウを閉じて下さい * |