しあわせな時間









「ふいー・・・いいお天気だねぇ。」


屋上の扉を開けた途端に大きく伸びをして私は言った。

大好きな彼とのお昼ごはんは、ココ、屋上で食べるのが一番すき。


「さあ!今日もチャンの力作お弁当を食べて頂きましょう!」


気張っていつもの特等席に座る。

特等席といっても、単なる端っこなんだけど。

でも、屋上から見える景色は、この位置が一番すき。


「今日は何?」


彼が言った。

まだ作り始めてちょっとだから、腕に自信はたっぷりって訳じゃないけど

今日のは力作。

だからいそいそと、包みを開ける。


「今日はねー・・・じゃじゃーん!オムライス!」


ふたを開けると・・・・・・・・・・・・・・・・ショック。


「あっちゃー・・・」


和谷がやっちゃった・・・という顔でお弁当箱を覗いている。

・・・中身はケチャップが悲惨なことに。

・・・・・・朝遅刻しそうで慌てて持ってきたからかもしれない・・・。


「うそー・・・」


なんか、泣きそう。

朝一生懸命作った努力はなんだったんだろう。

彼に喜んでほしくて、きれいにお弁当箱に詰めたのはなんだったんだろう。


「・・・・・・・・・」


しばらく黙り込んでると、和谷が私がオムライス用に持ってきたスプーンを取り出して食べ始めた。

黙々と、食べる。

私は、呆気にとられる。


「・・・んまいよ、コレ。」

「・・・へっ?」

「形は、が一生懸命作ったのに崩れちゃってるけど、味はすっげぇうまい。」

「・・・・・・ほ、ホント?」

「ホント。」


気が抜けた。

コレでまずいなんて言われたら立ち直れないと思ってたから。

そしたら和谷が、私のぶんのフォークを差し出した。


も食べろよ。昼休み終わっちゃうぜ。」


優しい和谷の態度にちっちゃい幸せを感じた。










私、和谷を好きになってよかった・・・










「・・・、ご飯粒ついてる。」

「えっ!どこどこ!?」


手探りで顔のあちこちを探すが、当たらない。

ムキになって探すけど、見つからない。

すると和谷が微笑みながら手を伸ばしてきた。


「ココだよ、ココ。ったくしょーがねーなぁ」


ご飯粒はくちびるの少し左側にあった。

取るときに、少しだけ、和谷の指がくちびるに触れた。

・・・ドキッとした。


「・・・あ、ありがと。」

「食べる?」


とったご飯粒を差し出して和谷が言った。


「た、食べないよ!」

「じゃあ俺が食べる。」


と、言って口に含んだ。


「うわ!和谷キタナイ!」

「なんでだよ。別に顔洗ってないとかないだろ。」

「ちゃんと洗ってるよ!」

「じゃあいいじゃん。もったいないよ。食べ物は粗末にしてはイケマセン。」

「・・・はぁい。」


図ってるんだか図ってないんだか。

でもどちらにせよ、米一粒も大事にする。

こんなところも和谷らしくて好き。


「はー・・・食った。」

「お腹いっぱいだー。」


ふたりして、伸びをする。


「ホントにいい天気だなー。」

「ねー。なんか寝ちゃいそう・・・」


そういって、私はごろんと仰向けに寝そべった。


「そーだなー。」


そういって、和谷も、寝そべった。





キーーンコーーンカーーンコーーン・・・





昼休みが終わるチャイムが鳴る。

グラウンドでサッカーやバスケをして遊んでた男子達も校舎に戻っていく。


「・・・鳴ったけど。」

「・・・鳴ったね。」

「・・・授業出なきゃマズイよな。」


すると和谷は起きあがった。

でも、私はなんかものすごい睡魔に襲われてたこともあって、

授業に出るのがめんどくさく感じ、寝そべったまま、和谷のズボンを引っ張った。


「・・・?」

「・・・やー。」

「やー・・・って・・・出ないとまずいぜ。」

「いいよー・・・1時間くらい。」

「・・・・・・・・」

「ね?」

「・・・しょーがねぇな。

成績優秀なサンもたまにはお休みが必要ですね。」


そう言うと和谷は寝そべったままの私の横に座った。

空が、よく見える。

真っ青で、その真っ青な空にかかる真っ白な雲が凄く綺麗だった。


「空が綺麗・・・」


思わず言った。

和谷も、上を見上げた。


「ホントだ・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「このまま、こうやっていられたらな・・・」

「・・・、そんなに眠いん?」


私が思っていったことと、ちょっと違う解釈をしたようだった。

おかしいなー・・・和谷は勘が鋭いのに。

・・・囲碁に関してだけなのカシラ。


「・・・んー・・・そうだけどそうじゃない。」

「何言ってんだ?」

「・・・・・・眠いの。」

「だろーな。」

「・・・・・・・・そうじゃなくて・・・・・」

「・・・」

「このまま和谷とずっといっしょにいたいなー・・・って思ったの。

誰もいない、私と和谷だけの世界で。」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」


・・・・・・なんで黙るんだろう。

睡魔に襲われ今にも眠りそうな頭を必死で動かして和谷の方を見た。





・・・和谷真っ赤だよ。

あ。目が合った。


「・・・よくそんな恥ずかしいセリフが言えるな。」

「なによー・・・和谷だって私にくっついてたご飯粒食べたじゃん。

あれだって十分恥ずかしいコトよ。」

「・・・あれは米がもったいないからで・・・」

「言い訳しないの。」

「・・・スイマセン。」


しゅん、となる和谷。

・・・うーん・・・和谷ってカッコ良いけど可愛いトコもあるんだよね。





・・・・・それにしても。

ダメだ。眠い。





「・・・和谷ぁ。」

「なに。」

「・・・寝てい?」

「いいよ。」

「ホントにー?じゃあおやすみー・・・」

「んー。おやすみ。」

























「・・・和谷ぁ。」

「なに。寝たんじゃないの?」















「・・・大好き・・・。」





「!」















「・・・・ぐぅ・・・・」

「・・・・なんだ寝言か。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・」















・・・・・・・・・・





・・・・・・・・・・・・・・・





なんか、うつらうつらしてる中で、

和谷の声が聞こえた。















「俺も大好きだよ。」















って・・・。















fine.

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神崎 恵さんのリクエストで、日常のさりげないところを可愛く甘く。
でした。
ど、どうでしょう・・・
微エロに走らないようにでも甘く・・・を目指したんですけど。
すっごいほんわ〜な雰囲気が出てれば良いんですけどね・・・。
ドキドキ。

私は微エロとかも好きですが、こういう日常のぽや〜んとしたのも
書く分には大好きです。(読むのはラヴラヴ!/笑)
なのでずいぶん楽しんで書けました。
和谷くんにご飯粒をとってもらう・・・っていうネタは
前から貯めてたのでココで書けて良かったですv
さぁみなさんも、和んでください!(無理)

では、ココまで読んで下さってありがとうございました。
次も楽しんで書けるよう頑張りますb

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