Motive Power











「あ、いたいた。和谷!」

にやにやと笑いながら近づいてくるのは、進藤ヒカル。
それをちょっと嫌そうに受けたのは

「なんだよ進藤。」

和谷義高。院生。

「あーっ?そんな態度取っちゃっていいのかよ?
おまえのだーい好きなが棋院に来てたぜ?」
「・・・・・・ホントかよ!?」
「ほんとだって。」
「で、今どこにいるんだ!?」

急に表情が明るくなり、ヒカルにギリギリまで身を乗り出して聞いた。

「んー・・・さっきは事務室入ってったけど。」
「さんきゅ、じゃあな!」

飲んでいた缶ジュースを一気に飲み干し、空き缶をゴミ箱に投げ入れ
急いでちょうど来たところのエレベーターに乗り込む。

「・・・・のチカラはすげーな」










胸が躍る。

あいつが来ている。

自分より一足先にプロになってしまったあいつが

あの年、想いを伝えられないまま院生を卒業してしまったあいつが

誰よりも大好きなあいつが

来ている。





エレベーターを出て、事務室へ向かおうと曲がった瞬間





どんっ





「きゃっ」





聞き慣れた、少し高めの声。





ぶつかって転ぶ勢いで閉じた瞳をそっと開けると










あいつがいた。










「いたた・・・・うわ、すいませんっ、だいじょうぶ・・・・」

しりもちをついた状態のまま向こうも瞳を開いた。
その表情は驚きでいっぱいだった。

「わ・・・・・・和谷くん!」

がばっと飛び起きて嬉しそうに言った。

「久しぶりー!なにまだ院生やってたんだ!?」
「おまえなぁ!」

ついこの間まで一緒にいた彼女との、この間と変わらないノリ。
こんな時間が、和谷は楽しくてしょうがなかった。

「どう?だいぶ強くなった?」
「ああ。今年はかなり調子イイ。いける。」
「そっかぁ・・・頑張ってね。私は雲の上から応援してますから!」
「ばーか。サンはまだ初段ですよね?すぐに抜いて差し上げます。」
「嫌味っぽくフルネームで呼ぶな!なんかくやしいからこれから連勝してやるー!」

廊下の端で、そんな会話がしばらく続いた。
まるでが院生時代の時の様に。

「ねぇ、和谷。」
「ん?」
「一局、やんない?」




















棋院の一般対局室。

静寂が部屋中を包み、碁を打つ音だけが響いた。

あるひとつの碁盤を見つめている人々は、皆、息を呑んだ。





「・・・・・ありません。」





その言葉で、今まで張りつめていた部屋の空気がふっと柔らかくなった。

「ちくしょー!やっぱは強えーよ!」
「ふふん。でしょ?まだ初段の私だってこれからもっと伸びていくんだから。」

ジャラジャラと石を片づけながらは言った。
和谷はだらしなく椅子の背に手を掛け、上を仰いでいる。

の対局中の真剣な表情・・・変わってなかった

俺はそれに、惚れたんだ・・・

「じゃあ私、そろそろ帰るね。」

そう言って、隣の椅子に掛けていた上着とカバンを取って立ち上がった。
片づけを全部にやらせてしまった、焦って和谷も立ち上がる。

「わ、わりぃ、片づけ全部やらせて」
「いいよいいよ、私が誘ったんだし!」

とびきりの笑顔。
しばらく会わないうちに、その笑顔も少し大人っぽくなった様にも思えた。
大人の中で揉まれているからなのだろうか。

「楽しかったあ。今日はありがとうね、和谷くん。」
「え、あ、いや・・・こっちこそ。」
「? どーしたの?さっきっからぼーっとして。」

横からひょいっと和谷の顔を覗き込んだ。

その不思議そうな表情があまりにも可愛くて・・・





「・・・んっ」





無意識のうちに自分の唇はの唇に触れていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

離れるとは真っ赤になり、和谷は言った。

「ごめん・・・いきなりこんなことして・・・・・でも俺・・・・」
「和谷くん・・・私・・・・」

何か言いたげなの口封じをする様にを抱きしめた。





が、好きだ。ずっと前から・・・」





いま、自分の心拍数はいったいいくつなんだろう。
に、絶対聞こえてる・・・

そう思った。

は和谷の動悸が聞こえたのか、くすっと笑って言った。

「・・・・和谷くん、すごいドキドキいってるね。」
「・・・しょうがねーだろっ。恥ずかしいんだよ」
「でも私も同じだよ。すっごいドキドキ言ってるもん。」

そう言うと、和谷の背中に腕を回した。

「ねぇ、今日私が何しに来たか知ってる?」
「・・・・?」
「和谷くんに、会いに来たんだ」

・・・・嘘だろ?

これって、これって、

「私も、和谷くんが好き」

嬉しくなって、さらに強くを抱きしめた。

「なあ、
「なに?」
「俺、絶対今年プロ試験受かるから、覚悟しとけよ。
受かったら今度こそ、今度は公式戦で、を負かしてやるから。」
「・・・やれるものなら!」

そう言うの笑顔は、すごく嬉しそうだった。





絶対今年は、プロになってみせる。





と再び同じ世界に入ることを原動力に










fine.

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うわわわ・・・なんかまたスランプっぽい・・・!
どうしようなんだかすごく微妙なお話になってしまいました・・・
ごめんなさい・・・

と言うわけで逃亡。(ヲイ

感想等、頂けると狂喜し、やる気に繋がりますので
もしよろしければbbsに書き込んだり、メールで送ってやったりしてやって下さい。
それでは、ココまで読んで下さってどうもありがとうございました。
次回はもっと良いものを書けるよう頑張ります・・・。

020928

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