天使に出会った 天使と恋をした 天使ト恋ヲシタ 「ちくしょー。しばらく碁、うてねーじゃん。」 独特の臭いがする。 ココは病院。 過労で入院することになった。 囲碁のやりすぎ。 ・・・だってさ、越智に負けて悔しかったんだよ。 北斗杯・・・出られなくて悔しかったんだよ。 もっと強くなりたい って思ったんだよ。 「囲碁禁止令出されたし・・・・はぁ・・・・」 ぶつぶついいながら母さんに持ってきて貰った荷物を持って、病室へ向かう。 母さんは・・・と言うといま手続きをしてるらしい。・・・呆れた様子で。 「・・・・部屋は301って母さん言ってたよな・・・。」 その部屋の前で立ち止まる。 扉を開けようと、手を掛けた時 「・・・あの。」 今にも消え入りそうな声で、呼び止められた。 振り返ると 真っ白な肌の少女がいた 天使の様なその繊細さに、思わず見とれた 「・・・・・・何かご用ですか?」 我に返る。 「え?」 「ココ、私の部屋・・・なんですけど・・・」 「えっ!?」 慌ててプレートを見てみる。 301号室 「・・・・あれ?」 母さん確か・・・301って・・・ 「今日から入院される方ですよね?だとしたら、この隣の部屋だと思います。 一昨日そこ、空きましたから。」 そう言って、細い腕を上げて、細い指を伸ばして、隣の部屋を指差した。 指差された部屋のプレートを見に行くと、あった。 302号室 和谷義高 勘違いしていたことに気付き、恥ずかしくなる。 「うわ・・・」 「あってましたか?」 笑顔で聞かれる。 「あっ、ああ!あってました。すいません」 「そっか。よかった。」 本当に、嬉しそうに笑う。 「私、って言います。お身体、お大事に。」 そう言って、軽く会釈すると部屋に入っていった。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 不思議な気持ちだった。 暇だ。 暇すぎる。 碁に関する物は全て禁止になったし、ゲームは出来ないし・・・ どうしようもないから売店に行って本を買うことにした。 大きなガラス張りの渡り廊下。 中庭が見える。 ・・・・・あれ? あの少女がいた。 芝生に座り、少し寂しげな表情で、空を見ていた。 その表情はとても綺麗で・・・・・ しばらく見つめていると、偶然目があった。 すると彼女は、嬉しそうに手を振って、手招きした。 なんとなく恥ずかしかったが、無視するわけにも行かないので、 そして丁度何もすることもなく、退屈だったので、側に行くことに。 「おはよう」 ・・・?いまは午後だけど・・・? 「今はおはようの時間じゃないって思ったでしょ。 ごめんね。なんかさ、一日で初めて会う人ってどうしてもおはようって言っちゃうんだ。」 「・・・へぇ。でも俺もときどきあるよ。研修の時とかに・・・」 あっ、と思った。 思い出したら、打ちたくなってしまう。 「・・・な・・・なんでもない。」 「そう?」 「あ、ああ。」 ふうっとため息をついて、空を見上げた。 俺も、見上げた。 「そういえば・・・和谷くん、いくつ?」 「あれ?俺の名前・・・」 「ああ。この間プレート見たの。和谷義高くん。」 綺麗な声で、名前を呼ばれた。 胸が、高鳴る。 「私と同い年くらいかなーって思ったんだけど・・・」 「あ・・・いま17・・・」 「じゃあ・・・高校2年生?」 「・・・・そうなるかな。」 「・・・そうなるかなって?」 「・・・高校行ってないから。」 「・・・・・・・そうなんだ・・・?」 「ああ。」 驚いた様子。 そりゃそうだよな。 今時はどんなに成績が悪くてもだいたいみんな流されて高校に行く。 「は?」 「あ。私も高校2年だよ。・・・行ってないけど。」 くすっと笑った。 でも、その笑顔は寂しそうで・・・・ きっと彼女は、行きたいと思ってる。 ずっと、入院してて・・・行きたくても行けない。 「あ。もう時間だ・・・。部屋戻らなきゃ。」 そう言って、立ち上がる彼女は なんか、翼が生えて、飛んでいきそうだった。 「・・・和谷くん?」 気がついたら、彼女の手を掴んでて・・・ 「え?あっ、わりぃ!」 慌てて離した。 「あ、そうだ!」 今度は彼女から手を繋いできた。 「義高くんって呼んでいい?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいよ。」 手が気になって気になって、どうしようもなかった。 「そっか!じゃあ、義高くん、またね!」 そう言って軽く手を振った彼女は、ゆっくりと歩いて、院内に戻っていた。 俺は その後ろ姿を、ずっと見ていた。 見ていたかった。 いつも彼女はいた。 中庭に。 俺が話すことは、全部楽しそうに聞いてくれた。 家族のこと。友達のこと。病院のこと。囲碁のこと。 病院内の噂には彼女は詳しくて、色々教えてくれた。 いつも笑顔で でもときどき、儚げな表情になる優しい彼女に だんだん惹かれていくのがわかった。 「あ、義高くんだ。」 廊下でばったり会った。 でも、今日は車椅子で、看護士に車椅子を押して貰っていた。 「ねぇ、いつものとこ、行こうよ。」 「え、でも・・・」 「これから行く途中だったの。ちょっと押して貰わないと行けないんだけど・・・」 「・・・いいけど。」 「やった!」 すると、何かを看護士に耳打ちした。 その後、看護士はその場を離れていった。 「あれ・・・いいのか?」 「いいのいいの。でも義高くんに押して貰うことになっちゃうけど、いいよね?」 「ああ。」 そう言って、車椅子を押した。 羽が生えた様に軽かった。 中庭に着くと、彼女は腕を大きく上げて、深呼吸した。 「はーっ。やっぱり外の空気はいいですねー。」 そう言うが儚すぎて、さっきの軽さの感覚もあって、今にも飛んでいきそうで、 つい、車椅子をしっかり押さえてしまった。 「おや?義高君くん、どうしたの?」 「いや、なんでもない。」 「そう?・・・・・・あ、そうだ!今日は義高くんをとっておきの場所に連れて行っちゃいましょう! 私しかたぶん知らない秘密の場所です!」 人差し指を高く掲げて、言った。 「って言っても義高くんに連れて行ってもらうんだけどね。 さあ義高くん!あの木の陰に向かって進んでくださーい。」 彼女に言われたとおりに進む。 ちょっと道が悪いけど、なんか、わくわくした。 彼女しかたぶん知らない秘密の場所 そんなところに、連れて行ってもらえる これは、信頼されている証拠? そこは、空の上かと思った。 この小さな天使が、空の上へ連れてきてくれたのだろうか・・・ そう思わずにはいられなかった。 この病院は、丘の上にある。 たどり着いたところは、がけっぷち。 フェンスがあるものの、街が一望出来た。 「・・・・すげぇ・・・」 「でしょ?最初病院を脱走した時に、見つけたんだ。」 「脱走したんだ?」 「あ。」 ちょっとはにかんで、笑う。 愛しくて、どうしようもなかった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 無意識に。 でも、唇に何かが触れる感覚はあって 「・・・・・・・・・・・・・」 俯いてしまう。 俺は我に返って・・・ 「うわっ、ご、ごめん!お、俺何やってんだろ!ほ、ホントごめ・・・」 慌てふためいていたら、シャツの裾を引っ張られた。 俯いていたから表情は見えなかったけど、真っ赤で・・・・ 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・義高くん・・・・・・・なんで・・・・・・・?・・・なんで、私なんかに・・・・・・・」 「・・・が、好きだから・・・・」 そういうとは顔を上げて、言った。 瞳は、微かに潤んでいた。 「・・・・・・・私も、好き・・・」 それから、俺達は、その場所へ行っては話をし、唇を重ねた ずっと、いっしょにいたいと、おもった なにがあっても、はなしたくないと、おもった でも、彼女は、車椅子での生活が多くなった。 そして、ベッドでの生活も、多くなった。 next -------------------------------------------------- す、スイマセン・・・ 間が無駄にありすぎてスクロールバーが凄いことになったので前後編に・・・。 とりあえづ、反省は後編にて。 * 続きを読まない方はこのままウィンドウを閉じて下さい * |